TEC-1343より:詳しくはTEC確認ください。

2024 年9月30日から10月4日に国際海事機関(IMO)第82回海洋環境保護委員会(MEPC 82) が開催されました。 今般、IMOよりMEPC 82の議事録及び決議並びにサーキュラーが発行されたことから、次の通り同 会合の情報及び審議結果をお知らせいたします。
温室効果ガス(GHG)関連 地球温暖化対策の観点から温室効果ガス(GHG)排出削減が世界的な課題となっている 中、国際海運からのGHG排出削減対策はIMOにて検討が進められており、IMOではこ れまでにエネルギー効率設計指標による規制(EEDI/EEXI)、船舶エネルギー効率管理計 画書(SEEMP)の所持、燃料消費実績報告制度(IMO DCS)及び燃費実績(CII)格付け 制度が導入されています。また、2023年7月に開催されたMEPC 80では、IMOの掲げる GHG排出削減目標(下表)とGHG排出削減策の候補を盛り込んだ「IMO GHG削減戦略」 の改訂版が採択され、以降、国際海運としての目標達成を目指して関連する様々な議論が 行われています。
目標年 GHG排出削減目標(2023年版)
2030 年 ・ 輸送効率最低40%改善(2008年比)
・ GHG総排出量の最低20%削減(30%削減を目指す) (2008 年比)
・ ゼロエミッション燃料等の最低5%普及(10%普及を目指す)
2040 年 ・ GHG総排出量の最低70%削減(80%削減を目指す) (2008 年比)
2050 年 ・ 遅くとも2050年頃までにGHGネット排出ゼロ
TEC-1228より:詳細はTEC確認ください。

(1) EEDI 規制に関する技術開発状況レビュー MARPOL条約 附属書VI第21.6規則では、EEDIの改善に 寄与する技術の開発動向を 定期的にレビューし、要すればフェーズの開始時期、及び削減率を見直す ことが規定され ています。
(i) EEDI フェーズ3規制の見直し
フェーズ 3 の早期実施や削減率について、MEPC 74 で承認された MARPOL 条約
附属書VIの改正案が採択されました。改正された規定は次の通りです。
(添付1 : 決議 MEPC.324(75) 参照)
- 一般貨物船、LNG運搬船、クルーズ客船は適用開始を2025年から2022年に前 倒し、
削減率は30%を維持。
- 15,000DWT 未満のガス運搬船(LPG運搬船等)は2025年の適用開始を維持す るが、
15,000DWT以上の大型ガス運搬船(LPG運搬船等)は適用開始を2025年 から2022年に
前倒しする。削減率はサイズによらず30%を維持。
- コンテナ船の規制適用開始を2025 年から 2022 年に前倒し、削減率は次の通り 船のサイズ
により定めた。
DWT 削減率
10,000 以上 15,000 未満 15-30% (DWTに応じて線形補間)
15,000 以上 40,000未満 30%
40,000 以上 80,000 未満 35%
80,000 以上 120,000 未満 40%
120,000 以上 200,000 未満 45%
200,000 以上 50%
- その他の船種は、現行の規定通り2025年の適用開始を維持し、削減率について も30%を維持。
(ii) 超大型ばら積貨物船のリファレンスライン
参考とする船舶のデータがなく、必要以上に厳しい規制値となっていた 279,000DWT
以上の超大型ばら積貨物船について、規制値の基準となるEEDIリファレンスラインを
修正するMARPOL条約 附属書VIの改正が採択されました。
(添付1 : 決議 MEPC.324(75) 参照)
(iii) EEDI フェーズ 4規制の検討
MEPC 74では、EEDIフェーズ4規制導入の必要性を検討するために、日本をコーデ ィネータ
とする通信部会が設置されました。 今回の会合には、通信部会から、エネルギー効率改善の
ための新技術及び代替燃料 に関する情報収集・分析、EEDI規制とIMO GHG削減戦略の関係性
の検討などを進 めていることを含む中間報告書が提出されました。通信部会は作業を継続し、
次回の MEPC 76 で最終報告を行う予定です。
(2) EEDI 規制と最低推進出力規制
荒天下における操船性を維持するため、MEPC 65 において暫定の最低推進出力ガイドラ イン
が策定されました。さらにMEPC 71では、暫定ガイドラインの適用期間をフェーズ2ま で
延長することが合意されています。一方、この最低推進出力規制により一定の出力を確 保する
必要がある反面、フェーズ3規制が強化されることから、フェーズ 3 への対応がさら に困難
になることが懸念されています。
EEDI 規制と最低推進出力規制の両方を満足するために、MEPC 74 では、通常航海時に は
機関出力を制限し、非常時(荒天時)は出力制限を解除することを認める出力制限・
非常用出力のコンセプトについて審議を行いました。審議の結果、さらなる検討が必要である
ことから、出力制限・非常用出力のコンセプトについて継続して検討を行うこと、
さらに並行 して、最低推進出力ガイドラインを最終化するための検討作業を進めることが
合意されまし た。 今回の会合では、時間の制約上、十分な審議時間を取れなかったことから、
コレスポンデ ンスグループを設置して、次回のMEPC 76に向けて審議を継続することが
合意されました。




